case 2 後藤杏子

27/28

1136人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「匿名の相手を探すって…もっと引かれると思うけど…普通はないでしょ?」 「普通じゃないところで出会えたら運命かもって思わない?」 「……思う…たくさんの引き寄せがあったな…って感じ」 「うん」 レンさんと奥さんが、注文を聞いてからコッペパンに具を挟んだり、ドリンクも入れてテイクアウトの袋を準備したりレジをするのを見ながら、これも好きな景色だと思った。 「あ、降ってきたのか…」 「傘、持ってるね。6月だもんね」 ここまで連続で土曜日だけ雨が降らなかったのもミラクルかもしれない。 「さとちゃんはいつもあの辺を散歩してるの?」 「いつもではないね。こっちに戻ってから週末は荷物を片付けないといけなかったし、花粉のキツい時期は歩かないから…ぶらぶらし始めたのはGWが終わったあと」 「…ドンピシャ……ぇ…アイコンの写真っていつ?」 「あぁ…杏子ちゃんと同じ歳くらいかな……ずいぶん前だよ。GWに帰省した時だと思う」 そうなんだ。彼の声を聞きながら自分の言った“ドンピシャ”が頭の中で渦巻く。 「ピアス、可愛いね」 「っ…ぁっ…これもメルカロンで買ったの」 カズさんから購入した、キラキラリボンの立体モチーフピアス。あのあと“イイネ”していたピアスは購入出来なかったけど、これはお気に入りだ。 「いいね…似合ってる。このあと…車でいい?電車で送ろうか?」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1136人が本棚に入れています
本棚に追加