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case 3 嶋田ナミ
「いらっしゃいま…」
なんだ、またお前か。そう言いたげに私と目を合わせた彼は私に“せ”まで言うのがもったいないとでも思っているのだろう。
「愛想悪い店員がいるっておばちゃんに言ってやる」
私がそう言っても顔色一つ変えずに、指でクイクイと“早くしろ”とばかりに私を呼ぶのは、ひとつ年上の野村大貴21歳。私、嶋田ナミの幼馴染だ。
おばちゃんというのは大貴のお母さんで、コンビニの複数店経営に成功しているオーナー。
ここはその複数店のうちのひとつで、私の家から5分くらい。大貴は夜のアルバイト中だ。
「お願いしまーす」
私は持っていた封筒を置いてスマホの画面を大貴に差し出す→大貴がピッとバーコードを読み取る→私がレジ画面のOKボタンを押す→出てきたレシートを私が封筒に貼る→依頼主控えを大貴から受け取る…はずが
「またキャラクターグッズかよ」
大貴は控えを見て私を見下ろす。
「欲しかったの?」
「けっ、物による」
「ははっ…だよね」
“けっ”と言いながらも“物による”と言うのは可愛いじゃないか、大貴クン。大貴クンなんて言ったら殺されそうだから、絶対に言わないけど。
「相手、大丈夫なのか?」
大貴はこれをよく聞くんだよ。私がメルカロンで売れた物をここから発送する度に…
「匿名のやり取りなんだから大丈夫だってば」
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