case 3 嶋田ナミ

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大貴はチラッと時計を見て 「送る。待ってろ」 と“お客様控え”を私に手渡した。 「いいよ、大丈夫」 オープン直後は24時営業だったけれど、今では敏腕おばちゃんは、自分がオーナーの店舗の全てを6時から23時営業に変えている。もう23時だから閉店なのは分かるけど…片付けを待ってる間に帰れるんだよね… 「ナミ、こんな遅くに来るお前が悪い。待て」 いろんなスイッチを切りながら私を睨んだ大貴の向こう側から、顔見知りのアルバイト、多田さんが私服に着替え終わって顔を出した。 「野村くん、過保護だねぇ。幼馴染って言ってたから、小さな女の子扱いのままかな?」 と、彼女は私と大貴を見比べてクスッと笑うと 「お先に失礼しまぁす」 と裏から帰って行った。 「あの人…もう帰っていいの…?」 「閉めるのに二人体制はいらないから」 一人勤務は絶対にダメだけどってことね。彼女を22時50分までというシフトにしているおばちゃんは、やっぱり凄いやり手だ。50分までとしておいても何となく10分くらい延びることもあるだろうし。 私は大貴と裏から出るつもりでレジの中を横切って奥へ行く。大貴は制服を脱ぎながら 「ピアス、それ初めて見た」 と顎を動かす。 「これもメルカロンだよ」 「グッズだけじゃないのか?」 「グッズが9割。他が1割だね」 私は好きなアニメやマンガのイベントなどへ行くのが大好き。でもグッズが溜まり過ぎるので、くじやランダムなプレゼントで手元に来た推し以外の物や、重なった物をメルカロンで出品している。そして売上金でどうしても欲しいグッズを購入するのが基本。
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