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4.
「やったなぁ、お前ら〜」
岡屋先生が含み笑いで教室に入ってきたのは、一月も終わりかけの寒い朝だった。
二学期の終業式の日、どんどん増えてクリアファイルに入らなくなった署名用紙をダブルクリップで留め、私とあおいで校長先生に手渡した。署名活動なんて、それにどんな効果があるのかもわからないままやってみたけれど。
「西校舎の取り壊し、再検討ってことになったらしいぞ〜」
普段は気だるそうな先生が、なんだか嬉しそうに言う。その朗報に、教室のあちこちから一斉に歓声が噴き出した。
「やったぁ!」
「よっしゃー!」
「よかったああぁぁぁっ!!」
驚きと喜びで、私は声が出なかった。思わず振り向くと、あおいが満面の笑みでピースを突き出している。それでようやく、じわじわ実感がわいてきた。
「わぁ……」
手が震える。体が震える。
私にも、できることってあったんだ。
……もしかしてこれ、おさじさんが見せてくれてる夢、だったりして。
スカートのポケットに、そっと手を入れてみる。指先が何かに触れて、ギクッとしたけれど。
それはスプーンではなく、ママが「今日寒いから」と入れてくれたカイロだった。
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