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無言で教室の引き戸を開ける。
ガラガラッ
普段は気にならない音が、ひどく不快で泣きたくなった。
「おはよー、って、えー?! 美奈星?!」
仲良しのあおいが大きな声で呼んだせいで、クラスじゅうの視線が私に刺さる。
うわっ、最悪!
そう思ったのに、あおいはさらにボリュームを上げた。
「すごい! マジかわいい! めっちゃ似合うじゃん!!」
……え?
びっくりした私に、あおいが駆け寄ってくる。あおいだけじゃなく、他の女子の何人かも目をキラキラさせて集まってきた。
「美奈星のオン眉かわいすぎ!」
「その制服のアレンジもすごいじゃん」
「それな! 髪型にばっちり合ってる」
「あたしこんなヒロインどっかで見たよ! えっと、そーだ、たしか、オードリー・ヘップバーン!」
「知ってる! ローマの休日!」
「確かに! 似てるぅ!」
おさじさんの魔法がかかった制服は、かつて銀幕の女優が着ていたようなAラインシルエットにアレンジされているらしい。とまどう私を囲んだ女子たちはうっとりと目を細め、口を揃えて言った。
「かぁわいーい♡」
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