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3.
うちの中学の本校舎には家庭科室がある。ミシンや調理用具があって、家庭科の授業も手芸部の活動も、ここでやってる。家庭科の担当はさくら先生だ。
だから西校舎にある被服室は、授業では使っていない。おさじさんは授業をしないし、行事にも参加しない。なんならPTA広報誌の教員紹介にも載ってない。でも、エブリスタウン中学校の卒業生は、みんなおさじさんのことを知っている。この町で育ったママも、そして、今はもういないパパもたぶん。
「それで、署名はどのくらい集まった?」
夕飯のハンバーグを私のお皿に乗せながら、エプロン姿のママが聞いた。
『西校舎の取り壊し中止を求める署名運動』は私とあおいが提案して、一週間前に全クラスに用紙を配ってきた。記入フォームを作ってくれたのは、パソコンが得意な宵宮くんだ。
「書いてくれてはいると思うんだけど、紙が返ってこないクラスが多いんだよね。今誰が持ってるかわかんない、みたいな」
「あぁ、なるほど」
「冬休み前までに返ってきてくれたらいいんだけど」
「〆切が終業式なのよね?」
「うん。あ、でもね、意外なことに先生たちが結構書いてくれて」
「へぇ、そうなの?」
「うん。昨日、怖いと思ってた篠木先生が『署名させてくれ』って教室まで来てくれて、びっくりした」
「反逆児、カッコいいじゃん」
「反逆児、かぁ……」
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