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肆國・狭貫國
「おー! 城見えてきた! 超城でまじバイブスあがる~! まぁまぁデカめな城だから町も栄えてる感じっしょ、あげみ~!! 今夜はハリピってオールしようぜプチョヘンザ!」
遠目に見えてきた立派な城にテンションを上げるのは派手な金髪に翠玉色の瞳、そして褐色の肌を持つ年の頃17くらいの少年だ。
金糸の髪は襟足が腰の辺りまでひょろりと長くまるで尻尾のよう。山吹色の短丈小袖は袴を穿かず膝小僧が丸見えで、袖も肩口の所でバッサリと切り落とされている。そして黒の手甲脚絆という装いだ。
「カァー!! 相っ変わらず何言ってか分からねーが、うるせーことだけは確かだなぁ! やい八裂、この馬鹿ガキが!」
急に上から降ってきた声、そして羽音。気がつくと八裂と呼ばれた金髪の少年の頭には三つ足の烏がとまっており、人間の言葉で悪態をついた。
「おい、人の頭の上に乗んなよ鳥野郎! つか馬鹿ってなんなん?? オレは馬鹿じゃねーから、ガチで!」
「はぁ? お前が"馬鹿"じゃないってなら、一体どーいうヤツが馬鹿なんだよすっとこどっこい! 城見た感想が"超城"とか語彙力無さすぎだぜ!」
「城は城なんだから"超城"でなんも問題ねーし! つかゴイリョクってなに??」
ギャーギャーと言い争う一人と一羽を見かね、少し後ろを歩く少女が困り顔で口を開く。
「……け、喧嘩するほど仲が良いと言いますが、ハチくんとヤタさんは喧嘩をし過ぎだと思います。ええと、その、少し頻度の方を減らしてくださいませ、」
少女の名は亀代。
年齢は18で、茶色の内巻きミディアムボブに青緑色の大きな瞳。
肌は日で少々焼けており、鼻の頭にはそばかすが点々とある。太い眉は常に下がり気味だ。
薄紅色の無地の小袖に桜の花の模様が散りばめられた藍色の湯巻き。左側頭部には大きな桜の髪飾りをつけている。
遠慮がちに言う気の弱い亀代を八裂と烏のヤタは同時に振り返り、そして声を揃える。
「「いや、仲良くねーし!!」」
タイミングがピッタリなんて本当に仲が良いんだなといつもの亀代なら微笑ましく思ってしまうのだが、今回ばかりそうもいかない。
彼女はそっと後ろを振り返る。
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