5人が本棚に入れています
本棚に追加
これまでに、母から叱られた記憶がない。それは、私がいい子だからだ、、と言いたいところだが、
子供に否定的なことは言わない。やる気スイッチをオンにするのが、得意な人だと思った。
元幼稚園教諭だったことは、私や、妹弟にとっても有難いことだったと思う。
そのお陰で、叱られる事をしないで済んだ。
とにかく、不思議ちゃんだと思いながら育ててくれたに違いない。自身では、至って、普通だと思いながら過ごしていた。
正直な自由人。
あれから、ランドセルを置いたまま、勝手に朝礼の前に帰宅することはなくなったが、相変わらず、自由人であることは、暫く、続いた。
そんなこんなで、先生も、初めての1年生の担任になって、大変だった事だろう。
「お邪魔します。」
先生の夏休みも決まり、ご自宅へ招かれた、、のではなく、、
正しくは、ゴリ押しで〝遊びに行きたいなアピール“を数人のクラスメイトで押し切った様なものだった。
先生の部屋へ入ると、部屋を隅から隅まで見渡した。興味津々の子供には、憧れている先生を飛び越えて、
お姉さんの部屋を見たいのが本音です。
親戚に大学生のお姉さんがいて、そのお姉さんの部屋に似ていたのが、なんとも親近感が湧いて、うっすらにやけていた。
「先生は、どうして小学校の先生になろうと思ったの?」と、スイカをご馳走になりながら、またまた唐突に聞いた。
子供が好きだから、とか、子供の頃から教師になりたかった、とか、どんな事を
話してくれるのか、ドキドキしながら返答を待った。
先生は、質問されると、上を1度見上げて、大きな目で瞬きしながら考えていた。
「実はね、本当は、スチュワーデス(現在は、C.A)に、なりたくて、採用試験を受けたんだけれど、残念ながら、、、と、
指でバツを作って見せた。
教員資格はあったので、小学校の教員になるべくしてなったと話しながら、少し、寂しそうな表情に見えた。
そんな先生に、私は、
「先生、本当は、スチュワーデスになりたかったんだよね?」
「うん、なりたかったけど、今は、皆んなのクラスの担任になって楽しいよ!先生になれて良かったって思ってる。」
先生は、笑顔で返してくれた。
私は、やっぱり、「この人、なんか凄い」と子供ながらに感動した。
「先生になってくれて、有難う」と言った後に、私はこう続けた。
「先生、先生は、小学校の先生になれたんだから、きっと、スチュワーデスにもなれると思うよ‼︎‼︎」
「先生になって、今度は、スチュワーデスにもなれたら素敵だよね‼︎ 諦めないで、試験を、いつか受けてね‼︎」と話した。
数年後に、先生はスチュワーデスになったそうです。
私は、転校したので、あれから、先生に、何があったのか分かりませんが、その事を聞いた時は、なんだか自分のことのように、
凄く嬉しかった。
「やったね!先生!」と、心の中で拍手した。
人は、諦めなければ、時間がかかっても、遠回りしても、必ず、そこへ辿り着けると、先生から学んだ。
その貝殻の舞台で、1人、踊り続けたバレリーナが、私の担任だった。
私が、初めて憧れた人。
「先生、このオルゴール、素敵だね。ピンクや白くてキラキラした貝殻が敷き詰められてる、、」
「お姫様の宝箱みたいで、素敵。私も、大人になったら、こんな素敵な宝箱が欲しいな〜」と言うと、
「貴方にあげる。」と言って手渡してくれた日を忘れない。
蓋を開けると、曲が流れ、バレリーナが踊っている。初めて見るオルゴール。
すっかり、虜になってしまい、何度も曲が終わるまで見ていた。
あれは、きっと、レムリアの王女様から頂いた宝物だった、と、ふと思う時が今もある。
何かを諦めかけた時、自信がなくなった時、思い出す。
6歳の少女が、初めて、家族以外の人を信頼し、憧れた人を、何年経っても、何十年経っても、
思い出さないことはない。
私にとって、先生との出会いは必然。
誰しも、この人は!と直感がサインをくれた時は、きっと、人生の大切な宝箱を渡してくれるはず、、
貴方は、受け取りましたか?
宝箱は、色んな形かもしれない。言葉かもしれない。
巡り合わせは、偶然だとは思わない。出会いは、順番が決まっている。幸せになるために。
完。
ここまで読んで頂いて、有難うございます。心から感謝申し上げます。
皆様に、幸が溢れることを、願っています。
最初のコメントを投稿しよう!