小さな国のバレリーナ

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これまでに、母から叱られた記憶がない。それは、私がいい子だからだ、、と言いたいところだが、 子供に否定的なことは言わない。やる気スイッチをオンにするのが、得意な人だと思った。 元幼稚園教諭だったことは、私や、妹弟にとっても有難いことだったと思う。 そのお陰で、叱られる事をしないで済んだ。 とにかく、不思議ちゃんだと思いながら育ててくれたに違いない。自身では、至って、普通だと思いながら過ごしていた。 正直な自由人。 あれから、ランドセルを置いたまま、勝手に朝礼の前に帰宅することはなくなったが、相変わらず、自由人であることは、暫く、続いた。 そんなこんなで、先生も、初めての1年生の担任になって、大変だった事だろう。 「お邪魔します。」 先生の夏休みも決まり、ご自宅へ招かれた、、のではなく、、 正しくは、ゴリ押しで〝遊びに行きたいなアピール“を数人のクラスメイトで押し切った様なものだった。 先生の部屋へ入ると、部屋を隅から隅まで見渡した。興味津々の子供には、憧れている先生を飛び越えて、 お姉さんの部屋を見たいのが本音です。 親戚に大学生のお姉さんがいて、そのお姉さんの部屋に似ていたのが、なんとも親近感が湧いて、うっすらにやけていた。 「先生は、どうして小学校の先生になろうと思ったの?」と、スイカをご馳走になりながら、またまた唐突に聞いた。 子供が好きだから、とか、子供の頃から教師になりたかった、とか、どんな事を 話してくれるのか、ドキドキしながら返答を待った。 先生は、質問されると、上を1度見上げて、大きな目で瞬きしながら考えていた。 「実はね、本当は、スチュワーデス(現在は、C.A)に、なりたくて、採用試験を受けたんだけれど、残念ながら、、、と、 指でバツを作って見せた。 教員資格はあったので、小学校の教員になるべくしてなったと話しながら、少し、寂しそうな表情に見えた。 そんな先生に、私は、 「先生、本当は、スチュワーデスになりたかったんだよね?」 「うん、なりたかったけど、今は、皆んなのクラスの担任になって楽しいよ!先生になれて良かったって思ってる。」 先生は、笑顔で返してくれた。 私は、やっぱり、「この人、なんか凄い」と子供ながらに感動した。 「先生になってくれて、有難う」と言った後に、私はこう続けた。 「先生、先生は、小学校の先生になれたんだから、きっと、スチュワーデスにもなれると思うよ‼︎‼︎」 「先生になって、今度は、スチュワーデスにもなれたら素敵だよね‼︎ 諦めないで、試験を、いつか受けてね‼︎」と話した。 数年後に、先生はスチュワーデスになったそうです。 私は、転校したので、あれから、先生に、何があったのか分かりませんが、その事を聞いた時は、なんだか自分のことのように、 凄く嬉しかった。 「やったね!先生!」と、心の中で拍手した。 人は、諦めなければ、時間がかかっても、遠回りしても、必ず、そこへ辿り着けると、先生から学んだ。 その貝殻の舞台で、1人、踊り続けたバレリーナが、私の担任だった。 私が、初めて憧れた人。 「先生、このオルゴール、素敵だね。ピンクや白くてキラキラした貝殻が敷き詰められてる、、」 「お姫様の宝箱みたいで、素敵。私も、大人になったら、こんな素敵な宝箱が欲しいな〜」と言うと、 「貴方にあげる。」と言って手渡してくれた日を忘れない。 蓋を開けると、曲が流れ、バレリーナが踊っている。初めて見るオルゴール。 すっかり、虜になってしまい、何度も曲が終わるまで見ていた。 あれは、きっと、レムリアの王女様から頂いた宝物だった、と、ふと思う時が今もある。 何かを諦めかけた時、自信がなくなった時、思い出す。 6歳の少女が、初めて、家族以外の人を信頼し、憧れた人を、何年経っても、何十年経っても、 思い出さないことはない。 私にとって、先生との出会いは必然。 誰しも、この人は!と直感がサインをくれた時は、きっと、人生の大切な宝箱を渡してくれるはず、、 貴方は、受け取りましたか? 宝箱は、色んな形かもしれない。言葉かもしれない。 巡り合わせは、偶然だとは思わない。出会いは、順番が決まっている。幸せになるために。       完。 ここまで読んで頂いて、有難うございます。心から感謝申し上げます。 皆様に、幸が溢れることを、願っています。
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