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「社会人として場に馴染むように『化ける』のも必須スキルだと思ってるし、合わせるのは全然構わないの。でもさぁ。大して関係ない人ならともかく、彼氏にもずっと身構えてんのってどうなのよ、と思って」
「ああ、それは……。私も『外でデート』はそのための服も着るしお洒落もするけど、家で会うときは一人でいるのと変わらないわ」
千晶の主張はよくわかる。
燈里も、自宅に恋人を招いたら余所行きの格好は終わり。「プライベートスペースに入れる」というのは、燈里にとってはそういうことなのだ。
何より入浴後も、そのまま同じベッドで朝を迎えたときも、当然化粧気もなく素の状態だし恥ずかしいとも感じない。
それを躊躇うような相手に、何もかも晒すことなどそもそもできない気がした。
「そうよね! だからこの間三人で会ったあとに初めて京介があたしの部屋に来たとき、決死の覚悟で『普段通りのあたし』をお見せしたのよ。すっぴんジャージの。……それまでは、部屋に呼んでも最低限のメイクしてちょっとはマシな服着てたからさ」
京介、玄関ドア開けて固まってたよ、と千晶は朗らかに続ける。
「あ、これはやっちゃったか!? って頭抱えそうになったけど、もうどうしようもないから開き直って平然と『どうぞ、上がって』って言ったの。そしたら京介、『なんで高校のジャージなんだよ、それくらい新しいの買えよ!』って。そこかよ!」
二人の表情まで容易に浮かんで、吹き出しそうになるのを燈里はようやく堪えた。
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