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ハロウィンパーティー!
またこの季節がやってきた。
アヤのため息が増える、この季節が。
アヤが副支配人として勤めていたホテルでは毎年、無駄にハロウィンに力を入れており、かなりガチなハロウィンパーティーが行われたものだ。海辺のリゾート地にあるホテルゆえ、夏が終われば当然客足も減る。そんな時期にこの催しを開くことで、少しでも夏以外の客足を増やそうという思惑だったのだが、予想以上に好評で、それゆえ年々グレードアップせざるを得ない状況になっていった。
そんな人気行事なので、現在アヤが支配人を勤める和歌山の新館でももちろん受け継がれている。
従業員は全員強制的に本気の仮装を強いられ、余興やなんやと忙しい。それは支配人とて例外にあらず、オープン後初の昨年は
『初めて』であることを利用して、ものすごく無難な警察官的な格好で乗り切った。さすがに支配人はやらないが、余興要員となると、カボチャの着ぐるみを着たり布一枚かぶってお化けになって走り回ったりと、言うなればイロモノ的立ち位置に立たされる。
さて、今年は――
「今年は? 何すんの?」
「何の話?」
「んもう、すっとぼけて! 決まってるやろ~」
「……仮装?」
「やっぱりわかってるやんか」
アヤは悩んだ結果、数年前にやった吸血鬼の仮装でやりすごすことにした。幸いまだここではやっていない。しかしこの衣装を着ると、思い出す。この衣装を着たのは二回。その二回とも、リョウはワンコ……もとい、狼男の仮装をしていて、その格好のまま……
「で、何すんのん!」
「吸血鬼」
「んもぉ~また?! そろそろちゃうやつ見たいねんけど」
そんな回想に耽っているアヤとは正反対に、リョウは新しい仮装が見られると期待していたらしく、手抜きだのマンネリだのぶーぶー言っている。
「なんかイベントってやるん?」
「サイト見れば」
「商売っ気ないなあもう」
しぶしぶリョウがスマートフォンでアヤの勤務先であるリゾートホテルの公式サイトを検索する。
ハロウィン特別仕様のコンセプトルーム、アフタヌーンティー、ランチコースはもちろんのこと、当日のイベントはかぼちゃの重さ当てクイズ、トレジャーハンティング、ジャックオーランタンづくりのワークショップ……あまりにも詰め込みすぎではないだろうか。素人のリョウでも心配になってしまうほどにイベント目白押しだ。
前にいたホテルよりも内容がファミリー向けに寄った感じがする。この一年で客層の傾向を掴んだ上での戦略なのだろう。
「大丈夫なん、これ……?」
「大丈夫じゃない。だから今年は来なくていいよ、来ても相手出来ないからね」
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