36 舞台の上で

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「自分たちが利用するはずだった平民に捕らえられたお気持ちは?」  静かな声が響き、入ってきたのはマティアス王子とエリアスだった。マティアス様は喫驚の表情で固まっている大臣たちを軽く見るとまっすぐバルコニーの先に向かっていく。  民がどうなっているのか、座り込んだままの私から見えないけれど。  暗黒期の暗闇が嘘のように、広場が明るく見えるから。きっとたくさんの人が魔法を発動できたのだろう。 「イルマル王国第一王子マティアスだ! 今日この日をもってイルマル王国は変わっていく!」  凛とした声は、大きくざわついた広場でもよく通った。ざわめきが静かになっていく。 「マティアス!」  アルト様に捕らえられたままの国王が叫ぶ。 「皆さんにはご退場いただきましょう」  エリアスが言うと、広間の方からさらに臨時魔法士たちが何十名もやってきて彼らを連れていく。  よ、よかった。私の仕事は終わった。バルコニーの隅にいたままだった私は立ち上がって、マティアス様に背を向けて広間の方に向かうことにした。国の未来は彼らにお任せだ。私には―― 「魔女め!」 「アイノ!」  爆発するような鋭い声がして。振り向くとそこには少年がいた。殺意を瞳の中にたぎらせて私に剣を向けて。え、誰……? 「ヴェーティー様!」  大臣たちを見送っていたエリアスが叫び。アルト様が私に向かって手を伸ばすけれど。  彼は一体どこから現れたんだろう。そう思う間もなく、私の脇腹が熱く燃えた。
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