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37 全ての色がぶつかって
「あ……」
膝から崩れ落ちながら、視界の端でヴェーティーと呼ばれた少年が捕らえられるのを見て安堵する。
マティアス様は後ろの騒ぎを悟られないよう、民に向けて未来を語り続けている。
だから、大丈夫だ。
「アイノ!」
崩れ落ちて固いコンクリートに頬にこすりつけるしかなかった私は、柔らかくて暖かい大好きな人に包まれる。
「だい、じょうぶ、で、すよ」
私は微笑んでみせたが、正直あんまり大丈夫ではなさそうだ。身体を抱き起こされて自分の熱い脇腹が見えるようになったけれど、傷口から紫の煙のようなものが見える。なんだろう、これは……そう考えるのもおっくうになるほどに頭が重い。
「アルト、準備ができたわよ! すぐに!」
「ああ」
ショコラの声が聞こえたかと思うと、アルト様に抱きあげられて城内の広間に進んでいくのはわかった。そしていつの間にか我が家に戻ってきていることもわかった。
たぶん、ここは私の部屋だ。アルト様は私を抱きしめたままベッドに座ったみたいだ。
「アイノ、アイノ……!」
アルト様はずっと私の名前を呼び続けている。彼の後ろからショコラも見える。
大丈夫だよ、と伝えたくて口を開くけれどなぜだろう、言葉がでてこない。アルト様のこんな必死な顔を見るなんて初めてだなあ。私のためにこんなに必死な顔をしてくれるのかあ、なんて場の空気にそぐわない感想が出てきてしまうほど、私の頭の中はぼんやりしていた。
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