プロローグ:ドアマットモブは思い出す

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☆☆☆ 「いやったーーー! このドアマット生活からおさらばだーーー!!!」  大声で叫びたいけど、本当に叫んだらあの性悪たちに何をされるかわからない。私は物置に帰った後、心の中で叫んでバンザイするだけにおさめた。  この二年あの親子の言われるまま、それが当たり前だと思って受け入れてきた。自己肯定感がゴリゴリに削られて自分はグズで虐げられて当たり前の存在だと思っていた。  でも、前世を思い出してみれば! そんなわけない! そんなわけないんだよ!  前世の価値観がプラスされたら、客観的に自分を見ることができる。私がグズなんじゃない、あいつらがクズなだけだ。  そう思うとすべてが馬鹿らしくなる。前世のことはあんまり覚えてないけど、きっとポジティブな人間に違いない。十六年間のアイノにポジティブな性格がアップデートされて、完全体アイノになった。  私は部屋の隅に置いてある毛布の中からごそごそと小さな鏡を取り出した。プリンシラ家の者なのに身だしなみも整えないなんて!と髪の毛を燃やされたことがあったので、割れて捨てられていたサンドラの手鏡を拾ったんだ。 「うーん、やっぱりアイノのことは知らないな」
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