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驚き→喜びが思わず口を突いて出てきて、松島の唇が描いていた真一文字は消え去った。
分かり易過ぎる程あからさまな松島の反応に、藤井も又苦笑を隠さない。
隠せるわけがない。
ついつい釣られて、『素の表情』が出てしまう。
飾りであるはずの頭の上の耳がぴょこんと動いた様に見えたのは、単なる藤井の気のせいだ。
しかし、それが決定打となった。
「あぁ、まだある」
それ以上は詳しく話さずに、笑ったままで藤井はキッチンへと向かった。
冷蔵庫内から、持ち手のないマグカップを取り出した。
それと、ベイリーズとは違う洋酒の小瓶も併せ持って、リビングへと戻って来る。
「カボチャのプリンだ。スプーン、替えるか?」
「このままで大丈夫。で、今度のリキュールは何だ?」
松島は確かに目ざとかったが、真っ黒な瓶に黄色いラベルが貼られていては「見るな」と言う方が無理だろう。
松島の前に置く。
「カルーア。コーヒーリキュールだ」
「あ、これがカルーアの瓶なんだ」
松島が漏らした感想は「もっともだ」と藤井も納得する。
「『カルーアミルク』は有名だけどな。ベースのリキュールにまでは、そう馴染みがないよな」
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