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以前、藤井智将がした「バレンタインデーは直前の週末、土曜の夜に前倒しをしたい」という提案に、松島隆仁は一も二なく飛びついた。
諸手を上げて大賛成をした。
自分の告白に応えてくれた藤井と、「少しでも、例え一分一秒でも長く過ごしていたい!」と密かに思っていたので、願ったり叶ったりだった。
しかし、今夜はどうしてもそうするわけにいかなかった――。
やはり、今回も前倒しを提案してきた藤井を、「今回は当日じゃないとダメなんだ‼」と説得をした。
断固として、頑固なまでに譲らなかった松島だ。
松島にそこまで力説されてしまえば、藤井にはそれを拒否するだけの理由がなかった。
押し切られて、そのまま流される形となった。
松島が、あれ程まで『当日』にこだわりにこだわり抜いたハロウィンに、藤井はほとんど興味がなかった。
「全く」と言い切っても、言い過ぎではないくらいだ。
付き合っている松島には正直に白状したところ、
「・・・・・・ソレってやっぱり、甘いものが好きじゃないからか?」
と、まるっきり見当違いの方角で推理されてしまった。
「・・・・・・」
仮装をして訪ねた家々でお菓子をもらうのは、子供限定だと考えた藤井は無言を貫いた。
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