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 口先では何とか応じながら、指先は荒い息に湿る藤井の唇へと吸い寄せられる。 ――キスへの衝動を抑え込んだ、松島の精一杯だった。  撫でてくる松島の指の腹が「ひどくくすぐったい」と思いつつも、藤井は唇を動かし続ける。 「腹、いっぱいになったか・・・・・・?」 「・・・・・・」  この、藤井の問いかけに、松島は思わず黙る。 鮮やかな|既視感を覚えたからだ。  藤井と初めて寝た際にも、同じ様なやり取りを交わした――。  その時は一応うなずいたものの、「いっぱいじゃなくって、すっからかんになったのかも」と、自分の貯蔵庫をしげしげと見下ろしたものだった。 今は、余剰分(ストック)がまだまだ残っている気がする。  松島は自分の下半身ではなく、藤井の姿をそれこそ頭のてっぺんから爪先まで眺めた。  何時もは露わになっている形の良い額は、落ちた前髪へとすっかりと覆われ隠されていた。 ――そうしていると、より若く少年っぽく見えた。  微かに笑って自分を見上げてくる顔が、「とっても可愛い」とすら思う。
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