15 ※

5/5
前へ
/122ページ
次へ
 思い切って声をかけてきた松島を、藤井が顔だけで顧みた。 「あ、先にシャワー浴びるか?」 「え、えっと・・・・・・」 「疲れてるなら後にするか?俺はどっちでもいいけど」  あえてあっさりとした口調で訊ねてくる藤井の気配りが、松島にも分かった。 そのさりげない優しさはとてもうれしかったのだが――、あえて無視をした。  松島は、全く違うことを言い出す。 「俺は帰るよ」 「え?」  藤井は驚きの余りに、顔だけではなく体ごと松島へと向き直った。 未だに何も身に着けていない、――つまり素っ裸でいるのも忘れている様子の藤井に、松島は心の中で苦笑する。  「『目の毒』って、きっと、こういうことを言うんだろうなぁー」と、しみじみ思う。  松島は藤井の体を目に入れない様にするためにも、藤井の目だけを見つめて言った。 「会社から直接来ちゃったし。元々、今夜は帰るつもりだったから」 「そうか・・・・・・」  伏し目がちになった藤井は返事をしつつも、何かを考えている様だった。 顔を上げた藤井も又、真っすぐに松島を見返してきた。 「――そのままにして帰るのか?」 「えっ?」 「だから、『そのままの格好で帰れるのか?』って訊いてんの」
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加