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思い切って声をかけてきた松島を、藤井が顔だけで顧みた。
「あ、先にシャワー浴びるか?」
「え、えっと・・・・・・」
「疲れてるなら後にするか?俺はどっちでもいいけど」
あえてあっさりとした口調で訊ねてくる藤井の気配りが、松島にも分かった。
そのさりげない優しさはとてもうれしかったのだが――、あえて無視をした。
松島は、全く違うことを言い出す。
「俺は帰るよ」
「え?」
藤井は驚きの余りに、顔だけではなく体ごと松島へと向き直った。
未だに何も身に着けていない、――つまり素っ裸でいるのも忘れている様子の藤井に、松島は心の中で苦笑する。
「『目の毒』って、きっと、こういうことを言うんだろうなぁー」と、しみじみ思う。
松島は藤井の体を目に入れない様にするためにも、藤井の目だけを見つめて言った。
「会社から直接来ちゃったし。元々、今夜は帰るつもりだったから」
「そうか・・・・・・」
伏し目がちになった藤井は返事をしつつも、何かを考えている様だった。
顔を上げた藤井も又、真っすぐに松島を見返してきた。
「――そのままにして帰るのか?」
「えっ?」
「だから、『そのままの格好で帰れるのか?』って訊いてんの」
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