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藤井が続ける。
「と言っても、レシピが色々あり過ぎてよく分からなかった」
「えぇー」
分かりやすく、やす過ぎるほどに落胆する松島には、『大げさにガッカリしてみせる』悪知恵は備わっていない。
――どこまでも本気だった。
その本気さは、藤井の顔から苦々しいものをすっかりと消し去ってしまった。
手放しで、ただただ笑って藤井は言う。
「『作らない』とは言ってないだろ。マッシュポテトを使ったレシピがあったから、アイリッシュシチューにも使った蒸しジャガイモの残りを潰して、ホットケーキミックスに入れてみようと思う」
「それって、モチモチしてて美味そうだな~」
未だ作ってもいない料理の話を聞いただけで思い描く松島は本当に、心底食べることが好きなのだろう。
好きだから、――大好きだから、大切なのだ。
藤井は、食べること自体に松島ほどの情熱はない。
しかし、その気持ちは十二分に分かる。
分かる気がする。
食べられない料理を作ることほど、空しいことはないと思っている。
食べてくれる、もらえるのはその逆、真逆なまでに満たされることだった。
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