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17
藤井が言った様にハロウィンが今のアイルランドの大晦日だとしたら、元日であるその日。
5時に独りでに目を覚ました藤井は、前夜の宣言通りにボクスティ風のジャガイモ入りのパンケーキを作った。
そして、半ば無理矢理起こした松島と一緒に食べた。
何時もの松島は、けして寝起きが悪い方ではない。
――しかし、前夜の激しい全身運動と夜更かしがたたったのだろう。
朝食を済ませても間に合うギリギリまで、起き出そうとはしなかった。
一緒にシャワーを浴びた時の『おかわり』が余計だったのは、藤井の目にも明らかだ。
自分のベッドを当たり前の様に占拠している松島を、藤井は本気で蹴り飛ばしそうになった。
その怒りも、パンケーキと焼いたベーコンの両方に、皿から溢れ出さんばかりにたっぷりのメープルシロップをかけて食べる松島の笑顏を見た途端に、どこかへ行ってしまった――。
きっと、メープルシロップの波にでも押し流されてしまったのだろう。
藤井は、近所の自分の部屋へと帰って行く松島を見送る。
朝食の後片付けを済ませて、自分も出勤の支度をした。
そうして、何事も変わったことがない何時も平日を終えて帰宅した今、やっと気が付いた。
ベッドヘッドの上へと置かれている物に。
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