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 『噂をすれば影が差す』という言葉そのままだった。 その、松島張本人からだ。  「週末の予定が空いているなら、一緒にご飯を食べよう!」という、何時もと何も変わらない、同じ内容のものだった。 押してくるスタンプまでも又、両手を合わせて可愛らしく『お願いをしている』スニャイルでだった。  しかし、藤井の返信は、何時ものと同じではなかった。  今回はそれに、『泊まれる用意してこいよ。朝食にエッグベネディクトを作るから』という文章を付け足した。  『スマイル』のスタンプは買い求めていないので、無料の中からなるべく飾り気のないのを探し出して、押した。 藤井が選んだのは、柴犬が満面の笑みで吠えている絵柄だった。 ――丸っこくて、いかにも人懐っこい顔付きがどことなく松島に似ている様な気がした。  『何時もの』はスタンプは用いずに、文面のみの『分かった。夕飯でいいか?』で簡素(シンプル)に済ませていた藤井にしては、大サービスだ。 「大盤振る舞いだ」と言っても言い過ぎではないと、藤井は自分自身でそう思っていた。  案の定、当たり(ビンゴ)だった。
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