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藤井は松島の追及をあっさりとかわした。
「忘れるわけないだろ。松島と初めて食べた朝食の時の話だし」
「⁉」
松島は無言だったが、ゴクっと息を飲む音が藤井の耳に届いた。
せっかちにも、今から『エッグベネディクト』を楽しみにしてではない。
――初めての朝食の、前の夜のことを思い出したのだ。
それは、藤井にも分かった。
これじゃあまるで、『パブロフの犬』そのまんまだ。
松島へのメッセージへと犬のスタンプを押したのは、全くの見当違いでもなかった。
治まったはずの笑いが、再び胸の奥からこみ上げてくるのを感じつつ、藤井は言った。
「今度は《《ゆっくり味わって》食べような。今朝はだいぶ慌ただしかったし」
「あ、あぁ・・・・・・」
今朝、藤井が作ったボクスティ、アイルランド風パンケーキを松島は、
「もっとゆっくり味わって、もっといっぱい食べたい‼でも、時間がない!」
と大いに嘆きつつ、大いに食べていた。
そんな忙しい状況下でも、口の中に食べ物が入っている時はけしてしゃべらない松島は、さすが徹底していると言おうか。
藤井は変なところで感心したものだ。
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