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松島が席に着いたのを見届けて、藤井が水ならぬ酒を向けてくる。
「白ワイン冷やしてあるけど、飲むか?」
「じゃあ、一杯だけ。せっかくのハロウィンだから乾杯しよう!」
「あ、あぁ・・・・・・」
『渡りに船』とばかりに飛び乗ってくる松島の反射神経の良さに、仕向けた張本人のはずの藤井がたじろいだ。
何故に「ハロウィンだから乾杯」するのか全く分からなかったが、松島の勢いに押し流され、とりあえずはうなずく。
藤井はホワイトシチューに合わせて、あまり酸が立っていない穏やかな味の白を選んだ。
まったりとした樽香が強くないシャルドネは優しい味わいで、クリーム系によく合うと思う。
今一つ「合う」と断言出来ないのは、買い求めた『スマイル』の酒売り場では試飲を行なっていないからだ。
スーパーマーケットの一角でそれを求めるのは酷な話だと、藤井自身もよくよく分かっていた。
結局、ボトルの裏に記されていた『売り文句』を、丸々鵜吞みにした。
藤井は、冷蔵庫の野菜室に横倒しでしまっていた白ワインを取り出した。
こうする方が「冷え過ぎなくていい」と、ワインと料理との組み合わせの本で読んだことがあったのだ。
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