4/8
前へ
/122ページ
次へ
 松島が席に着いたのを見届けて、藤井が水ならぬ酒を向けてくる。 「白ワイン冷やしてあるけど、飲むか?」 「じゃあ、一杯だけ。せっかくのハロウィンだから乾杯しよう!」 「あ、あぁ・・・・・・」  『渡りに船』とばかりに飛び乗ってくる松島の反射神経の良さに、仕向けた張本人のはずの藤井がたじろいだ。  何故に「ハロウィンだから乾杯」するのか全く分からなかったが、松島の勢いに押し流され、とりあえずはうなずく。  藤井はホワイトシチューに合わせて、あまり酸が立っていない穏やかな味の白を選んだ。 まったりとした樽香が強くないシャルドネは優しい味わいで、クリーム系によく合う。  今一つ「合う」と断言出来ないのは、買い求めた『スマイル』の酒売り場では試飲を行なっていないからだ。  スーパーマーケットの一角でそれを求めるのは酷な話だと、藤井自身もよくよく分かっていた。 結局、ボトルの裏に記されていた『売り文句』を、丸々鵜吞みにした。  藤井は、冷蔵庫の野菜室に横倒しでしまっていた白ワインを取り出した。 こうする方が「冷え過ぎなくていい」と、ワインと料理との組み合わせ(マリアージュ)の本で読んだことがあったのだ。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加