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松島には顔が見えないのをいいことに、せいぜい思い出し笑いに耽る藤井の耳を、松島の声の不意打ちが襲った。
「藤井のことも『おかわり』したかったのになぁ――」
「何バカなこと言ってんだ!平日の朝っぱらから無理に決まってるだろ!」
まんまと引っかかって、つい応じてしまった藤井へと松島は続けざまに二の矢、三の矢を放ってきた。
「平日じゃなきゃいいんだ。土日なら休みだし」
「う・・・・・・」
それならば既に前例と言おうか、前科がある。
全く見えないが、今の松島の顔にニヤニヤ笑いが浮かんでいるのを、藤井は少しも疑わなかった。
言葉に、松島への回答に詰まる藤井の視線はさまよい出し、よりによってベッドヘッドに置かれていたマカロンもどきへと辿り着いてしまった。
ついさっき、松島のことを『パブロフの犬』呼ばわりした藤井だったが、瞬間、体の中心に火が点いた様な熱さを覚えた。
その熱を持て余しつつ、――でも、どうにかしてやり過ごしながら、藤井は電波を通して告げる。
「予約は受け付けてない‼」
「じゃあ、当日に予約するよ」
思わず声を高く荒げてしまった藤井とは対照的なまでに、落ち着き払った松島の声がすぐさま返してくる。
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