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二人が付き合い始めて、優に半年以上が過ぎた。
しかし、未だに何の事前連絡もなしに、藤井の部屋を訪ねることが出来ない松島だった。
今夜もちゃんと、「かなり遅くなったけど、これから行ってもいいか?」と藤井にお伺いを立てていた。
もちろん、藤井の「いいよ」という返事も確認済みだ。
でも、返信をした後→即寝落ちという可能性がないともいえない。
松島はその可能性を探り、疑っていた。
「寝てないよ。松島が『来る』って言ってたから寝てない」
一転、はっきりきっぱりとした口調で言い切った藤井は、けして言葉だけに頼らなかった。
薄手のコートから覗く松島のネクタイを、襟元ごと引っこ抜く勢いでねじ上げた。
「⁉」
不意打ちも不意打ちで、しかもそれなりにある身長差のせいで松島は思わずつんのめりそうになった。
「グーグー寝てられるわけないだろっ‼」
体どころか、唇までもが触れ合いそうなほどに近付いてやっと、松島は藤井が着替えていないことに気が付いた。
藤井は何時ものエプロンを身に着けていたが、その下はワイシャツにスラックス姿だ。
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