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思わず松島が聞き返す。
あざとい、素知らぬふりなどではなかった。
本当に本気で、藤井が何故くすぐったがるのかが、まるっきり分からなかった。
続く藤井の言葉に、その答えがあった。
「・・・・・・何だ、その格好」
「あ」
ここに至ってようやく、松島は自分がハロウィンの仮装をしていることを思い出した。
我ながら相当間が抜けていると、心底呆れ果てる。
松島が扮しているのは一応、狼男だった。
見ようによっては狼のに見えなくもない、――正直、犬とどこがどう違うのかよく分からない耳付きのカチューシャを頭にはめていた。
両手には「やたらと爪が長いだけの」犬・・・・・・じゃなくて、あくまでも狼の手袋。
手を覆うモフモフとした毛は灰色をしていて、その点は『ハイイロオオカミ』を目指した結果なのかも知れない。
もっと本格的な仮装、何なら変装、扮装レベルも考えるだけ考えた松島だったが、藤井に引かれるのは確実視なので止めておいた。
これでも十分、「藤井に冗談として笑ってもらえるレベル」までは落としたつもりだったのに・・・・・・
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