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左へと逃げ出した藤井の目のすぐ下に、松島の視線は釘付けになる。
明らかに、あからさまなまでに真っ赤っかだった・・・・・・
「自分でも、おかしいって思うくらいだ」
独りごちる藤井の小声を、松島は聞き漏らさなかった。
「『おかしい』って・・・・・・お菓子なだけにか?」
「違う‼」
藤井はすかさず、顔を視線ごと松島へと向き直した。
そんな藤井の目に、左に小首をかしげた松島の姿が飛び込んでくる。
人好きのする童顔には、分かりやすくも?マークが浮かんでいた。
否定した藤井へと、途端に松島は顏をほころばせる。
「そうだよなぁ。藤井がそんなダジャレ言うわけないもんな!」
「・・・・・・」
松島にキッパリと言い切られて、藤井は「そうだ」とは言えなかった。
実は、言い終えた後で「お菓子なだけに、『おかしい』みたいだなぁ」と思ったのだ。
しかし、それをそのまま正直に、松島へと打ち明けられなかった――。
自分でも、勇気がないくせに見栄っ張りばかりなのが情けないと、つくづく嫌になる。
――ただ、嫌になっているだけではよくないと、駄目だと考えるようになった。
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