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そう思えるようになったのは、松島のおかげだ。
松島と付き合う様になって変わったことが幾つもあると、藤井はちゃんと自覚をしている。
今、松島へと告げようとしていることも又、その内の一つだった。
藤井が口元どころか、顔の下半分を手のひらですっかりと覆い隠して言った。
「甘いものが美味しいと思えなくなって食べなくなったくせに、気が付くと甘いもののことばかり考えてる」
「え?」
確かに、それは「おかしい」
藤井が言う通りだと、松島も思う。
藤井の目元の赤さは、今では形の良い額や両耳にまで上り切っていた。
――おそらく、手のひらの下も同じ色になっているのだろう。
「スーパーやコンビニに行ったり、テレビでバラエティー番組を観てる時、お菓子を見ると、『コレは、松島が好きなのかな?』とか、「こんなのは美味しく食べるのかな?』とか思ってしまう」
「・・・・・・」
「おかしい、だろ?」
松島の顔色を窺うかの様に、藤井が訊ねてくる。
松島の手首を握っていた藤井の手は、とっくに力が抜けていた。
自然と、剥がれ落ちるかの様に離れていた。
相当、自信がないのだろうか・・・・・・
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