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 何もかもが、松島が言う通りだ。 もしも、甘いものを嫌いになったのならば、わざわざ作るどころか見るのも嫌になるだろう。 松島に言い聞かせられた今の今まで、藤井は全然思い付かなかった。  ――自ら、気が付こうとしなかった。  やっと手のひらが退けられた藤井の口元は、苦々しく笑っていた。 スッキリとしていて、清々しくさえあった。 「そうか・・・・・・俺、お菓子のこと嫌いになっていなかったんだな」 「そうだよ。ホント今さらだよ」  しみじみと半ば独り言としてつぶやく藤井に、何事もあまり気にしない松島もさすがに呆れた様だ。 釣られて、自分自身でも苦笑する。  その顔を見て、藤井はもう一つのこともちゃんと松島に告げようと心に決めた。 「その、心だけじゃないんだ――」 「は?」  案の定、藤井が想像していた通りに松島が驚く。  首をかしげる仕種までが、そっくりそのまま同じだった。 藤井はもう口を覆わなかったが、思わず横を向いてしまった。 顔の右半分が、松島の視線を受け止める盾となった。 「体も、と言おうか――、思い出すんだ」 「・・・・・・」
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