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松島が何も言ってこないのは、「あえて沈黙で続きを促している」わけではないのだろう。
そういういやらしいことを松島はしないと、藤井は信じている。
だから、――だからこそ自分の口で言わなければならない。
息を吸い込んで、吐き出した勢いを借りて藤井は言った。
「甘いものを見たり考えたりすると、一緒に松島のことも思い出すんだ。その・・・・・・松島と、してる時のこと」
いくら小さくてか細くても当然、松島には藤井の声が聞こえているだろう。
しかし、やはり何も言わない。
視線だけが、藤井の右頬の辺りでしつこくさまよっている。
その熱さに煽られて急かされるかの様に、藤井は白状した。
「その時のことを体が覚えてるみたいで、熱くなるんだ・・・・・・」
とてもではないが、松島の目を見れなかった。
「そう、なんだ――」
松島の相づちにうなずいた拍子に、藤井は目を閉じてしまった。
藤井の恥ずかしさの基準では、とっくに限界を超えていた。
実際に声には出さなかったが、「よく頑張った!俺!」と自分で自分をほめてやりたくなったくらいだ。
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