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 松島を出迎えた藤井の冷ややかさとは真逆も真逆、対照的なまでに室内は温かかった。  いくら何でも、暖房をつけるにはまだ早い季節だ。  藤井が住む部屋に門などはないが、『門前払い』をされずに済んだ安心感が松島にそう思わせたのかも知れない。  考えられる温かさの源が、キッチンのガス台の上にあった。 ホウロウ製の片手鍋の火は、消されてまだ間もない様だった。  鍋の蓋を取った藤井が玉杓子(レードル)で中身をかき混ぜると、たちまち白い湯気が立ち上った。 「いい匂い~」  藤井には呼ばれていないのに、湯気に誘われた松島はキッチンへと直行してくる。  その後ろで、フサフサとした造り物のお尻尾が、千切れんばかりにブンブンと振られている・・・・・・  さすがの松島もそこまで装着をしていないはずだと、藤井は真っ先に自分の目を疑った。 案の定、二度見をしたらあっさりと消えてなくなった。  一瞬とはいえ、妄想までしてしまった自分を誤魔化すかの様に、藤井は松島へと厳命する。 非情にも、人差し指で手袋をビシッと指し示した。 「外して、手洗って来いよ」 「うん、分かった・・・・・・」
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