95人が本棚に入れています
本棚に追加
松島は、単に優しいだけではなかった。
手のひらへと落としている目はローションを映し出し、濡れ光っている。
その目がとても性的で、扇情的に藤井には見える。
――どれ程、松島が空腹で料理をガッついていたとしても、見られない烈しさだった。
どんなご馳走よりも、自分は松島にとって『美味しい』のだろう・・・・・・
そうに違いない。
藤井は心密かに決め込んで、思う存分に自惚れた。
読心術など会得をしていない松島が、藤井へとお伺いを立ててくる。
「痛かったらすぐ教えて」
「分かった」
松島と交わす直前のやり取りも毎回ほぼ同じ、――はっきり言って一緒だった。
もはや『お約束』と断言してもいいくらいだったが、藤井はけしてマンネリだとは思わない。
藤井が返事をすると、それに応えてなのか松島は必ず小さなキスを寄越してくる。
「少しでも脱力出来るように」という、松島の気配りの証しなのだと藤井は捉えている。
つい、笑顔になって両端が持ち上げる藤井の唇へと、勝手に追加をしてくる松島だった。
――それで、藤井はすっかりと体の力を抜くことが出来た。
「ふぅっ」
最初のコメントを投稿しよう!