怪の名前

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 昂輝は皆に自分が作ったクラス新聞が面白く無いと言われたことがショックで、ひとり図書室の机に突っ伏していた。無理やり推薦されてなった新聞係なのに理不尽だ。 「昂輝君の『ご近所怪談』悪くなかったよ。ちょっとテーマが地味だっただけで」  同じ新聞係の美愛が慰めてくれたが、付け足された言葉がグサリと胸に突き刺さった。 「美愛ちゃんの『おススメ本』のコーナーはいつも人気だもん。羨ましいよ」 「じゃあ、入れ替わってみる? 毎回、小説読んでレヴュー書くのも大変だし、実はちょっと怪談も面白そうだなって思ってたんだ」  きっと器用な美愛なら自分よりも面白い記事になるだろう。 「いや、もう一回挑戦してみる。日曜日に大学生の従兄がじいちゃん家に来るっていうから、会って相談してみたいんだ」 「ふうん。ね、イケメン?」 「え? 知らない。もっと小さかった時に遊んでもらったらしいけど覚えてないもん」 「そうなんだ。写真撮って来てよ」 「え、やだよ」  美愛がつんと口を尖らせたが、廊下に待ち人を見つけ嬉々として駆け寄って行った。従兄からクラスの人気者へ興味が移ったらしい。思わずため息が出た。地味な自分はせいぜい与えられた場所で頑張るしかないのだ。
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