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「美愛ちゃん、また明日ね」
おざなりに手を振る美愛に苦笑しつつ学校を出た。借りた怪談の本がずっしりと重い。こんな怖い本を記事のためとはいえ何冊も読まねばいけないのだと思うと何度もため息が出た。
「ただいま」
「お帰り。遅かったね」
ソファーにランドセルを降ろし、配られたプリント類を母に渡す。
「何これ」
ランドセルから飛び出た怪談本を母が引っ張り出した。
「うわ。今の小学生ってこんな怖い本読むの?」
「まとめて新聞に書かなきゃいけないんだ」
「怪談か、お母さんが知ってるのはねえ。保育園でお昼寝の時間にね、誰かの足音が聞こえるの。とんとんとん、とんとんとんって。のぼってはおりて、またのぼってはおりて。昼寝の時間ずっとよ。おかげで一睡も出来なくて」
「それ怖い話なの?」
「階段の怪談?」
「ダジャレかよ! 全然怖くないし」
「えっ、そう? 話し方がいけなかったかも。じゃあさ」
下手な怪談を続けそうな母を遮り、自分の部屋へ行く。センスの無さは母親譲りだったのだ。ごろんと寝っ転がり、借りた本を眺めた。黒い装丁におどろおどろしい文字が躍っている。
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