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ガラス窓でできた向こう側には、許された者たちのみが席に着くことができる。小田嶋陸人にとってそこは手の届かない、憧れの地だった。
「陸人くん」
テーブルを挟んで向かい合う、教育チームのリーダーである宮田明代が、静かに陸人へ声をかける。いつも笑顔で陸人に接してくれる宮田は、年齢も雰囲気も母親によく似ていた。
自分は今から、母親と近しい年齢の大人に怒られる。この春に大学を卒業して、アルバイト入社ではあるがやりたい仕事に就いて、ようやくちゃんとした『大人』になれたと思った途端にこれだ。いたたまれなさとやるせなさが一気に押し寄せて、返す言葉も出なかった。
朝礼後、いつものように他の同期たちと研修室へ移動しようとすると、話があると宮田に引き止められた。宮田の顔は固く、陸人は一瞬で「ついに来たか」と察した。
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