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宮田に連れられて入った『会議室A』は、だだっぴろいオフィスフロアの隅に造られた小さな部屋だ。折り畳みの長机が二本と椅子が四脚あるものの、所狭しと新人研修用の資料が積まれているため、二人座るだけでも圧迫感がある。まして今の陸人にとってこの場所は、空気が薄くて仕方ない。
何も言わないでいる陸人に、宮田は少し考えたあと、ためらうように口を開いた。
「陸人くんは、うちの会社が何をするところかわかる?」
「えっと……、お客様が利用しているクレジットカードについての問い合わせに対して迅速かつ正確に答えるところ……です」
座学研修のときに配られたマニュアルの一ページ目を思い返しながらもぞもぞと返事をする。陸人からの反応があったことに、宮田はホッと表情を崩した。
「そうね。わたしたちはどのようにしてお客様と会話をするのかしら?」
陸人は言葉に詰まり、とっさに視線を左に走らせる。窓ガラスを挟んだ先に見える業務フロアでは、すでにたくさんの人たちが自席に座って、九時の始業にあわせて準備を始めている。
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