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 グレーの絨毯張りのオフィスフロアには一列五席、左右あわせて十席の島が八つ並んでいる。繁忙日である請求額の引き落とし日当日であれば、すべての席に人が座るという。先々週にこの会社に入社したばかりの陸人は実際にその姿を目にしたことはまだないが、おそらくその光景は圧巻だろう。  すべてのデスクの上に立てられた、三方を遮断するパーテーションのせいで、オペレーターの顔は見えない。けれども後ろ姿は見える。耳に着けたヘッドセットは仕事中の証であり、何をしているのかというと、それは──。 「……電話を使います」 「その通り。陸人くんもそれをわかっていて、うちに入社したのよね?」  宮田の口調は子どもに言い聞かせるかのようにゆっくりとしていた。まなざしは穏やかで、決して責めたいわけではないと言外から伝わってくる。陸人は宮田の顔色をうかがいながらも、はいと頷いた。 「でも受電研修が始まってからこの三日間、一本も電話口で話せていないよね?」  言われた瞬間、ぴしりと表情が固まる。一番突かれたくないところを突かれてしまった。黙った陸人に、宮田が畳み掛ける。
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