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俺が部屋に入ると同時に、巡査見習と指導担当警官の両名が起立した。
指導担当警官は、ステファニー・ダーラム巡査部長、巡査見習はミッシェル・マクビー。
配属はハミルトン/ナイアガラ地区支部だ。
両名に着席を促してから、俺は口火を切る。
「実務研修評価担当のハンセン準警部だ。マクビー巡査見習の研修実績につき尋ねたいことがあって、今回のインタビューを設定した」
言い終えた途端、早速にステファニー・ダーラムが口を挟んできた。
「マクビー巡査見習の指導担当をしております、ダーラム巡査部長です」
テーブルの上に置かれた指の爪は短く切りそろえられてはいるが、薄くマニキュアが施されている。
「今回マクビー巡査見習に対し、このような場が設定されたことについては、指導担当としては心外だと言う意見を表明いたします」
ダーラム巡査部長が、一気にまくし立てた。
「『心外』とは? サージ・ダーラム、あなたには、特に心当たりがないと」
「マクビー巡査見習は、これまでのところ大変優秀な実績を積んでいます」
ステファニー・ダーラムは、少々好戦的ともいえる口調になり即答する。
俺はそれを聞きながら、マクビー巡査見習の方を眺めた。
ミッシェル・マグビーは、それ以外に他に取りようがないほどの完璧な態度で、インタビューに臨んでいた。
この場における最上官である俺に対する敬意を損なわないように細心の注意を払いながらも、自身を擁護する指導担当警官の発言を真剣に受け止めている様子を垣間見せることも忘れていない、といった風に。
そして俺は、ダーラム巡査部長に視線を戻す。
「優秀すぎるほどでは?」
「マグビー巡査見習には、既に地方警察でのキャリアがありますから」
ダーラム巡査部長は「何を自明の事を」とでも言わんばかりの剣幕だった。
正直、インタビュー開始早々、これほどまでに感情的な対応を取られるとは予想していなかった。
「マグビー巡査見習が、四年間、トロント警察に在職していた事は了解している。アカデミーでの成績が良好だったと言うこともだ」
それ以上ダーラム巡査部長に口を挟ませないために、俺は声に威圧感を滲ませる。
「ただ、彼の『豊富』な経験を差し引いても、どうしても腑に落ちない点がある」
両名に今一度睨みをきかせてから、俺は話を続けた。
「まず、マグビー巡査見習の担当事件の多さだ。わたしはリージョン内の実務研修中の全警官のデータを一覧しているが、まず最初にその点が目に付いた」
ダーラム巡査部長が、気色ばんで何事かを述べようとするのを一瞥で押し止めて、俺は言う。
「ハミルトン/ナイアガラ地域が有数の犯罪多発地域であることは事実だ。だが、メトロポリタン・トロントの各局に配属されている新人と比べて、倍以上の月もあると言うのは奇妙だと思わないかな? ダーラム巡査部長」
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