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古い作りのわりには、水周りはしっかりとしているフラットだった。 ジャックのバスルームはたっぷりと湯が出て、快適な使い心地だった。 俺は壁のフックに引っ掛けてあったブルーのバスタオルを取って髪と身体を拭き、それを腰に巻きつけるとバスルームを出た。 サイドテーブルのランプ一つだけが灯っているリビングルームで、ジャックは肘掛に脚をのせ、一人掛けのソファーに沈み込んでいた。 俺はジャックの脚が載っている方の肘掛に寄りかかり、ジャックの頭を触った。 「大丈夫か? ジャック」 ジャックはうたた寝をしていたようだったが、すぐに目を覚ました。 「そうだ、これ…」と言いながら立ち上がると、ジャックがサイドテーブルからバーボンのボトルを取り上げた。 「昔、誰かが持ってきてくれてたんだ。ずっと忘れてたけど」 「レッドトップか……悪くない」 「氷、要る?」 ジャックが目を擦りながらキッチンの方へ歩き出すのを腕を掴んで押しとどめ、俺は言った。 「勝手に飲るから、色々気にしなくていい。シャワーでも浴びて来い」 ジャックは頷きながら、ベッドルームの方へと歩き始めた。 「バスルームにあったタオルは、使わせてもらった」 俺はジャックの背中に声をかけてからキッチンへ行き、ナイフを使って封蝋を剥がす。 ジャックがさっき水を飲んだグラスに、氷を放り入れ、その上からたっぷりとバーボンを注いだ。 グラスを手にして、さっきまでジャックが伸びていたソファーに腰掛ける。 ふと壁を見ると、俺のコートの横に、制服を入れたスーツカバーが掛かっている。 溜息のような笑いを漏らして、俺はグラスに口をつけた。 二杯目を作ってソファーに戻ったところで、ジャックがバスルームから姿を現した。タオルを被っただけの金色の髪からは、まだ雫が滴り落ちていた。 ジャックは俺を見ると、すこし微笑って「それ、ちゃんと美味しい?」と尋ねた。 俺は礼の代わりに、軽くグラスを掲げた。 ジャックはベッドルームに入っていき、少しして、また出てきた。 スウェットパンツをはき、手にしたTシャツを頭から被りながら、また俺に話し掛けた。 「料理、上手なんですね。美味しかった」 黙っていると、更にジャックは続けた。 「家でも、作ってあげたりするんですか?」 俺はグラスから顔を上げる。 「自分で喰うため以外には、料理しない」 ジャックは一瞬息をのんで、俺を見つめたが、すぐに再び話しを続けた。 「そういえば。スタンって、スコッチの方が好きなんじゃなかったっけ」 ジャックは俺のグラスに手を伸ばし一口含むと、グラスを返して言った。 「うん、そうだったよ、確か。アカデミーのクラブでは、いつもスコッチか白ワインだった」 そしてジャックは、バスタオル一枚だけの俺を一瞬見て、すぐに目をそらす。 「よく覚えていたな、そんなこと。だがメーカーズ・マークは、バーボンの中では一番好みだ」 言って、俺はグラスを空けた。 「なんでわざわざ、また服を着るんだ? ジャック」 俺はソファーから立ち上がる。 「スタン、着替え持ってないの? 何か貸すよ」 ジャックは話をはぐらかそうとでもするように、慌ててベッドルームへと向かった。 俺もその後を追う。 ベッドルームは他のどの部屋とも打って変わった感じの、まるで一昔前の映画に出てくるティーンエイジャーの部屋のようだった。 部屋の隅には、古いバスケットボールと洗い終わって積み上げてある洗濯物。 閉めきったままのカーテンが掛った出窓には、CDプレーヤーが置かれていて、部屋のあちこち、ベッドの上にもCDが散乱している。 クローゼットの横の作り付けの棚には、雑誌からボトルシップまで、雑多な物が詰め込まれていた。 ジャックがクローゼットからシャツを取り出そうとしている後ろで、俺は思わず吹き出した。 ジャックは驚いて振り返り、「散らかしてるから、入ってこないでよ……スタン!」と言って俺の腕を押した。 「入るなって? じゃあ一体どこでするんだ。キッチンの床は、今日は勘弁してくれ」 俺の腕を押しているジャックの手首を取ってねじり上げと、膝を軽く蹴ってベッドへと押し倒した。 「ああ、脱がされるのが、そんなに好きか?」 俺はジャックの両手首を左手で押さえつけながら、右手で邪魔なCDをベッドの上から払い除けた。 ジャックの瞼と睫毛に軽くキスをして、舌を耳元に這わせる。 耳朶を舌先で玩び、そのままゆっくりと吸うと、ジャックは鋭く叫び声を上げた。 舌を耳孔に差し入れた途端、ジャックの息遣いは激しさを増す。 俺が左手を緩めてジャックの両手を解放してやると、ジャックは指を俺の背中に這わせた。 そして、俺の腰からバスタオルを引きはがし、ヒップから腰、背中、そして肩へと撫で上げて、また撫で下ろす。ジャックの腰に押し当てた俺の腿に、熱く、硬い感触が伝わってくる。 俺は引きむしるように、ジャックのTシャツを押し上げて脱がせ、親指の腹でジャックの両方の乳首に微かに触れ、鎖骨に沿ってじっくりと舌を這わせた。 ジャックが大きく首を振る。叫び声を押し殺すように激しい溜息をついた。 「どうした? 随分感じているな」 俺はジャックの胸元から顔をあげると、耳に顔を近づけて言ってやった。 「わかんないよ、何か……変なんだ」 ジャックは喘ぎながら訴えた。 俺はジャックの乳首を玩ぶ指先に、更に力を加えた。 「あれから、自分で『した』か?」 一呼吸喘ぐと、ジャックは腰をくねらせた。 「どうなんだ?」 ジャックの耳介に舌を這わせる。 「……したよ」 ジャックは躊躇いながらも、はっきりと答えた。 俺は片手を下へと滑らせ、スウェットパンツの上からジャックの硬く熱くなっている部分を掌で包みこんだ。ジャックは一度激しく痙攣したが、自分の両手の甲を顔に強く押し当てて懸命に息を殺していた。 「下着は着けてないようだな」 掌を押し当てたままゆっくりと動かすと、すでにジャックの先端から漏れ出していた液体が、スウェットパンツを濡らして染み出してきた。 「脱ぐか?」と尋ねれば、ジャックは返事の代わりのように背中を反らせ、大きく腰を浮かせた。 一気に足首までスウェットパンツを引き下げてから、ジャックの足首を掴み、膝が胸につくように曲げさせ、脚をスウェットから抜き取った。 俺はジャックの足首を掴んだまま、更に脚を押し開き、あらわになったジャックのペニスに唇で触れる。 「いつからこんなに勃ってたんだ? ジャック」 ジャックのペニスの根元を掴んで支えながら先端の割れ目に舌を這わせる。 「スタン。お願いだから……明かり、消して」 舌をペニスの付け根の方に動かし、更にもっと奥の方まで這わせる。 それから、アボカドの種子のようなジャックの睾丸を、わざと音を立ててしゃぶった。 「こんなもの。この前、全部見ている」 ジャックは喘ぎ声で途切れ途切れになりながらも、なおも明かりを消してくれと訴えた。 俺は起き上がって、壁のスイッチを押し、照明を消した。 僅かに開いたドアの隙間から細い光が差し込んで、引き締まって上を向いた形のいいジャックのヒップを照らしている。 うつ伏せになって、肩で息をしているジャックの腰を掴んで持ち上げ、俺は両手で割れ目を押し開いた。 ジャックがなされるがまま、腰を突き出してくる。 俺はジャックのその部分に顔を埋め、激しく唇と舌で責め立てた。 その度にジャックは、何度も短い叫び声を上げながら、腰とアナルを痙攣させる。 しばらくそこを口で可愛がった後、俺は顔を上げ、ジャックの首筋から肩甲骨のくぼみにかけてゆっくりと自分の頬で愛撫した。 ジャックの呼吸が少し収まってきたところで、今度は中指をジャックの中に滑り込ませた。 突然の刺激に反応して、ジャックは鋭い叫び声を上げたが、かまわずジャックの中をゆっくりとまさぐるように指を動かし続けた。 顔をきつくシーツに押し当てているジャックの髪を掴んで、俺の方に振り向かせる。 「どこが良いのか言え、ジャック」 俺は人差し指も合わせて、ジャックの中に挿し入れる。 その瞬間、ジャックは更にきつく瞼を閉じて、悲鳴を押し殺した。 「スタン、待って。駄目、そこ」 ジャックは、激しく身体を痙攣させた。 「まだイクなよ、ジャック。始めたばかりだろう?」 俺は指を引き抜き、ジャックの耳元で囁いた。 「ズルいよ、スタン。僕ばかり」 ジャックは、汗とも涙ともつかない水滴を頬に伝わせている。 「ズルい? じゃあ、お前はどうしたいんだ」 ジャックは激しい息遣いのまま、俺を黙って見つめた。 「どうしたいんだ? 言えよ。ジャック」 ジャックは、俺の両肩を掴み、覆い被さるように寝返りを打つと、ゆっくり俺の唇にキスをした。 最初は唇を包み込むようにやわらかく、次第に激しく舌を絡め始める。 俺はジャックの舌を絡め取って、逆に引き寄せた。 ジャックの手からみるみる力が抜けていく。 「口ほどにもないじゃないか、コーポラル」 そう言って、俺は再びジャックをシーツの上にうつ伏せに押し付け、熱く硬い自分のものを、ジャックに押し当てた。 切れ切れの悲鳴を上げ、それと呼応するように痙攣しているジャックの中に、俺はペニスを沈み込ませていく。 半分くらいまで挿入し、一旦動きを止めた。 ジャックの背中には、小さな汗の雫が一面に浮かんでいた。 再び腰を動かそうと、ベッドに手を付いた時、ジャックが言う。
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