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13 勤務地が正反対の方向にあることや、ジャックの大学の講義の関係などもあって、俺たちは、そう思うように逢うことはできなかった。 二人の関係を露見させないためには、それ位がちょうど良かったのかもしれない。 警官同士がゲイカップルであること自体、あからさまな非難をされないにしても、職場(RCMP)内で不利な状態に置かれるであろうことは目に見えていた。 ましてや、俺は「妻帯者」だ。 俺がオフィスから出歩くような仕事をしていなかったら、シフトの不規則なジャックと逢うのは、ほとんど不可能に近かっただろう。 自然に、俺がジャックのシフトに合わせ、ダウンタウンを訪れるようになった。 ニーナがオープン・カレッジの仕事を始めたことも幸いした。彼女は頻繁に家を空けるようになり、俺にも自由な時間が増えた。勿論、ニーナが単に大学の仕事「だけ」をしているとは、俺も思ってはいない。 ハミルトン/ナイアガラ地区支部に配属されていた「ミッキー」・マグビー巡査見習の名前が実務研修名簿から抹消されたのは、思ったよりずっと早かった。 この件に関し、おそらくレオン・マクロード警部補は、「ちょっとした点数稼ぎ」をしたことだろう。 アナスタシア・コンスタンティン巡査見習の件はと言うと、想定よりも処理が長引いた。 人事と法務の対応が、あまりにも杓子定規で、俺は何度も報告書を提出し直す羽目になっていたからだ。 どれぐらい酷かったかと言うと、俺が彼女等にインタビューしてから、ひと月近く経ってやっと、コンスタンティン巡査見習の指導担当教官の後任が選定された程だ。 コンスタンティン巡査見習の試用期間が長引くようなことになれば、巡査に昇格する時期がずれ込むことにもなりかねない。 とばっちりを受けるのが俺だけならまだしも、それでは彼女にとってはあまりにも気の毒な結果だ。それただ、トンプソン巡査部長がアナスタシア・コンスタンティン巡査見習の担当から外されたのが比較的早かったことだけは、幸いだったと言えるだろう。 そんなこんなで、俺は今日も、本部の人事の担当者が異動したとかで、電話でいちいち蒸し返される質問に付き合わされ続けた。総務はよほど暇らしい。 いいかげんうんざりして電話を叩き切った俺は、そのまま、さっさと帰宅することにした。 明日は、またトロントの三局を回らなければならない。少々早めに家でくつろいだって文句を言われる筋合いはない。 ルーティンの書類だけをざっとチェックして、制服のまま自室を出た。 エイミーのデスクに立ち寄り、明日のスケジュールを念押しし、俺は足早にパーキングへと向かう。 まだラッシュ前で、道は比較的空いており、家に着くまで一時間強しかかからなかった。 ガレージの扉をリモートコントローラーで開け、俺はニーナのブジョーの隣に車を滑り込ませる。 ブジョーのバンパーに触れると冷たかった。 ニーナのヤツ――どうやら今日は、出歩かなかったらしい。
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