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18 すきっ腹にシガーと酒が入って、軽い眩暈がした。 乗って来た車はノースウッドのパーキングに置いたまま、俺は地下鉄の駅へと歩く。 地下街で簡単な食事を取って、地下鉄に乗った。 二十分程で、セントクレア・ウェストに着く。駅から歩いてジャックのフラットに行くのは、これが初めてだ。 デリカテッセンの前を通りかかる。ジャックの部屋へ最初に行った時に、パニーノを買った店だ。 かなり遅い時間だが、店はまだ開いていた。商売熱心なことだ。 ふと気が向いて、足を踏み入れてみた。 以前見かけた白髪の老人はいない。 額が禿げ上がった四十がらみの男が一人、カウンターの中に座ってタブロイド紙を眺めていた。 声をかければ、男は新聞から目を上げ、愛想良く挨拶を返す。 俺がワインラックを眺めていると、男は「手伝いが必要なら声を掛けてくれ」と告げ、再びタブロイドに視線を落とした。 ワインの品揃えの多くは、西海岸のものだった。 俺は辛口の白とスプマンテを一本ずつ取り、カウンターへ向かう。 「赤で何か『お勧め』はあるか?」 カウンターにボトルを置きながら尋ねると、男は頷いて、奥から面白そうなイタリア物を幾つか取り出してくる。 その中から二本を選び、勘定を頼んだ。 男は、ボトルを一本ずつ紙袋に包んでから、厚手のプラスティクバッグに詰め込み、 「自家製だ」と言って、棚からグリッシーニの袋を取ると一緒に押し込んだ。 「朝に店にいる、年配の男性は?」 男の愛想の良さにつられ、俺はなんとなく尋ねてしまう。 大きく頷きながら、男は「あれは女房の父親だ」と答えた。 「最近こっちに呼んだんだ、ピエモンテを離れたがらなかったがね」 「シニョールもピエモンテの出身?」と尋ねれば、男は大きく首を振り、 「ピサだよ」と応じた。
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