18

2/3
前へ
/47ページ
次へ
土曜の夜だが、この界隈はいつも、人通りが少ない。 俺は素早くジャックのフラットの玄関に入り、階段を上がった。 キーリングには入れていないが、ジャックの部屋の鍵は持っている。 ウォレットから、その鍵を取り出して鍵穴に差し込んだ。 ジャックはもう帰宅していた。 「早いんだな」 ベッドルームにいるらしいジャックに声を掛け、キッチンへと向かう。 Tシャツを着ながら、ジャックがベッドルームから飛び出してきた。 「あれ? スタン。今、車の音した?」 俺は白とスプマンテを冷蔵庫に入れてから、ジャックの方を振り返る。 「地下鉄で来た」 ジャックは目をしばたたかせ、「めずらしいね」と呟いた。 「飯は喰ったのか?」 キッチンのスツールに腰掛けて俺が尋ねると、ジャックは向いの椅子に座りながら、 「休憩時に、サージ・ガードナーと軽食を」と答える。 「ああ、『メイプルシロップ漬けパンケーキ』か」 俺はジャックの深緑色の瞳を覗き込んで微笑んだ。 「僕のは『パンケーキのメイプルシロップがけ』だよ」 ジャックは眉を顰め、軽く首を振る。 「それで? スタンは。食事した?」 「適当に」 「今日は、ダウンタウンにいたの?」 ジャックが頬杖をついた。 「夕方からな」 ジャックは立ち上がって、俺の後ろの冷蔵庫からビールを取り出す。 「スタンも飲む?」 「水を取ってくれ」 「元気ないの?」 首を傾げながら、ジャックは俺にミネラルウォーターのボトルを手渡し、冷蔵庫にもたれながらビールの缶を開けた。 「もう、飲んできた」 俺は、直接ボトルから水を一口飲む。 「ふうん」と、ジャックは俺の背中に顔を寄せた。 「スタン。なんか、いつもと違う」 「違う?」 「いつもと違う匂いがするよ、これ何?」 ジャックが背中に鼻を擦りつけてくる。 「違う匂い」というのは、シガーの残り香のことかもしれない。 「まるで犬だな、ジャック」 笑いながら振り返り、俺はジャックの頭を腕で抱え込んだ。 「それ、どういう意味?」 ジャックが、ビールの缶をテーブルに置く。 そして床に膝をついて、俺の胸に顔を埋めた。 「シャワーを浴びてこよう」 俺はジャックの頭を撫でながら立ち上がる。 ジャックはしゃがんだまま、俺のシャツを引っぱると、 「そのままがいいよ」と言い、両手を伸ばした。 床にしゃがみこんだジャックに覆い被さるように、俺も顔を近づける。 ジャックは目を閉じて、俺の首の後ろに回した両手に力を込めた。 そして、俺の頭を引き寄せ、唇を俺の唇に重ねる。 俺は目を開けたまま、しばらくジャックにされるがままにしていた。 ジャックは俺の下唇を軽く吸いながら、ゆっくりと顔を離し、再び目を開けて俺を見つめた。 「しようよ」 いつになく積極的にジャックが言う。 ゆっくりと唇で睫毛に触れてやれば、ジャックはかすかに溜息を漏らした。 「今晩、泊まれる?」 「こんな時間から、どうやって帰れと言うんだ?」 そう言って、ジャックの顎を引き寄せ、口づけた。 そしてジャックの舌を求めて、更に強く唇を押し当てる。 ジャックは、俺の身体中になめ尽くさんばかりの激しい愛撫をした後、俺のペニスを口に含んで、有無をいわさず射精させた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加