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川に背を向け歩き出しながら、携帯を耳にあて、通話ボタンを押す。
電話は、ほんの一、二コールで繋がった。
「よう、スタンレイ。久しぶりだな」
レオン・マクロード警部補の朗らかなテナーが、耳を突き刺すほどの音量で聞こえてくる。
「確かに……『久しぶり』だな。そういえばレオン。トロントに来た時は、連絡をくれると思っていた。飲みに行こうと言ってただろう?」
「何の話だ? スタンレイ。ここのとこ、トロントに用事はなかったぜ?」
レオンは見事なおとぼけ口調で、しらばっくれて見せた。
「ああ、そうそう。こっちに足は運んでなかったと。ニーナは言ってたな、そういえば」
「何? お前のところの嫁さんが何だって、スタンレイ」
「そうだ。ニーナが色々世話になった。ああ、別に、俺が礼を言うようなことでもないか」
「ああ、あのこと…か」
さすがのマクロードも、もう無駄にシラを切るまでもないと思い至ったようだ。
「なあに、勿論、礼には及ばないさ、スタンレイ。お互い、アカデミー同期の仲じゃないか?」
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