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23 川に背を向け歩き出しながら、携帯を耳にあて、通話ボタンを押す。 電話は、ほんの一、二コールで繋がった。 「よう、スタンレイ。久しぶりだな」 レオン・マクロード警部補の朗らかなテナーが、耳を突き刺すほどの音量で聞こえてくる。 「確かに……『久しぶり』だな。そういえばレオン。トロント(こっち)に来た時は、連絡をくれると思っていた。飲みに行こうと言ってただろう?」 「何の話だ? スタンレイ。ここのとこ、トロントに用事はなかったぜ?」 レオンは見事なおとぼけ口調で、しらばっくれて見せた。 「ああ、そうそう。こっちに足は運んでなかったと。ニーナは言ってたな、そういえば」 「何? お前のところの嫁さんが何だって、スタンレイ」 「そうだ。ニーナが色々世話になった。ああ、別に、俺が礼を言うようなことでもないか」 「ああ、あのこと…か」 さすがのマクロードも、もう無駄にシラを切るまでもないと思い至ったようだ。 「なあに、勿論、礼には及ばないさ、スタンレイ。お互い、アカデミー同期の仲じゃないか?」 *
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