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インタビュー用の調査票をまとめる作業が、まだしばらくかかりそうだった。
RCMPのサーバーにある俺の電子キャビネットと各種のデータベースへは、管区内の警察機関のPCからしかアクセスできない。
家に持ち帰ることが出来ない以上、作業は、オフィスで終わらせておくしかなかった。
ニーナのモヴァに連絡を入れておこうと、デスクの電話の受話器を取る。
呼び出し音は、すぐに留守番電話に切り替わった。
遅くなるとメッセージを残し、俺は受話器を置く。
ニーナは元々トロントっ子で、俺が異動でレジャイナから出ると決まった時には、喜びを隠そうともしなかった。
こっちに転居してから随分経つが、未だに出かけ回る場所に困るという様子もなさそうで、始終、ダウンタウンに足を運んでいる。
「仕事を探している」
ニーナはそう言っていたが、どこまで本気なのか。
俺は少々疑問視していた。
結婚前、ニーナはロントで社会学のドクターコースに在籍していた。
だから、研究再開のため大学でのポジションを探しているのだと言う。
たとえ「配偶者」がトロントで定職を得たとしても、俺の転勤がなくなるわけではない。
「騎馬警官はカナダ全土どこにでも、いつ飛ばされるか分からない」ということは、十分、ニーナには言い聞かせてあるのだが――
ともかく「ロンドン市が俺のメインオフィスになること」は早くから判っていたから、トロント寄りに住むにしても、せめてダウンタウンの西、郊外の方に部屋を借りたいと、俺は思っていた。
しかし、「もう『田舎』には住みたくない」と言い張るニーナの意見を曲げることはできなかった。
ユーコンやヌナブトに行くわけじゃないというのに。
オンタリオ湖沿岸一帯でさえ、市内を外れれば、即座に「田舎」呼ばわりするようなニーナだ。
どう説得のしようもない。
結局、俺はオフィスから家まで、一時間半の道のりを運転して通勤する羽目になっていた。
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