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「……突いて、スタン」
ジャックが声を絞り出した。
警察学校の訓練が一番ハードになる十六週目あたり。
アスレチック・コースで最も心拍数の上がる部分に差し掛かった時の訓練生のように、息を荒らげている。
「良く聴こえないな?」
俺は掌でジャックの睾丸をゆっくりと転がし、更にその手を後ろへと滑らせた。
たっぷりと塗られたジェルが音を立て、ジャックは、短い叫び声を上げる。
「もう一回、ちゃんと言え」
右手でジャックを刺激しながら、左手でサイドテーブルのコンドームを取った。中身を取り出し、自分の部分に装着する。
ゴムがペニスを締め付ける感触に、洩れ出そうになる呻き声を噛み殺した。
「スタン、早く……挿れて。お願い」
ジャックはペニスの先端から透明な液を滴らせている。あとほんの僅かに刺激するだけで、すぐにそこから乳白色の液体が吹き出してくるに違いなかった。
「OK、カデット。本番だ」
ジャックの尻を平手で一発叩いた。
それを合図にしたかのように、ジャックは腰を持ち上げ、乱れたシーツの中に顔を埋める。
二、三度軽く突いただけで、俺の先端はジャックの中に入った。
ジャックの呻き声を聞きながら、更に奥深くに押し入れる。
ヤツの一番感じる場所は判っていた。だが、そこを攻めるのは、まだ早すぎる。
俺は角度を変えて、その周辺を擦った。
その部分への刺激を欲し、ジャックは自ら激しく腰をくねらせようとする。
……そうはさせない。
俺は腰を浮かせてペニスを引き戻した。
「もう、イクつもりか?」
そして、ジャックの金色の髪を掴み、その顔を後ろに、俺の方へと向ける。
ジャックの深緑色の目には、涙が浮かんでいた。
「スタン、止めちゃいやだ」
ジャックは懸命に息を整えようとする。
「こんなタイムじゃ、アカデミーの修了証明は出せないな。訓練生」
今度はジャックの顎を掴んで、さらにその顔を更に自分に引き寄せた。
首を不自然に捻られ、ジャックは苦しそうに顔を歪める。
「あなたはもう、僕の教官じゃないよ、スタンレイ=ストーン・コールド」
それは、ジャックが普段の人付き合いでは決してすることのない、反抗的な口調だった。
「そいつは失礼した、上級巡査」
この生意気な口答えに対する返礼の代わりに、俺は自分のものを根元までジャックの中に押し込む。
小さな悲鳴とともに、ジャックの肩は再びベッドに崩れ落ちた。
俺は、ゆっくりと腰を回し続ける。
「お願い、もう……」
絶え間なく呻き声を上げ、ジャックは切れ切れに口にする。
「お前はいつも上官にそんな口をきいているのか? コーポラル・ジャック=バティスト・ミシェル」
含み笑いを漏らしながら、俺はジャックを問い詰めた。
喘ぎ声の合間に、数回笑い声を立ててから、今度は腹に力の入った声を作って、ジャックが言う。
「大変失礼致しました、準警部殿!」
「良い返事だ。イカせてやる」
ジャックの腰をしっかりと掴み、求める部分に何度も擦り上げるようにペニスを押し当てる。
ジャックが短く息を飲んだ。
その直後、右手の中にあったジャックのペニスが激しく痙攣する。
熱い液体が指先から掌へと流れ込んできた。
そして、それは俺の腕を肘までつたい、シーツの上に次々と滴り落ちる。
精液で汚れた指をゆっくりと舐めながら腰を引き、ジャックの中から、硬いままの自分のペニスを一気に引き出した。
ジェルが一度小さな音を立てると同時に、ジャックが鋭く叫び声を上げる。
「こんなに出しやがって」
見せつけるように、俺は手に付いているジャックの精液を舐めて見せた。
「溜ってたんだよ。スタンに会えたのは久しぶりだ」
ジャックはいつもの少し不安げな――そう、不安げと言うのが一番しっくり来る微笑みを浮かべ、俺の汚れた右の手首を掴む。
そして、肘から指先に向かって、舌で自分の精液をすくい取るように舐め上げた。
背筋に快感の電流が走る。
ジャックがベッドに膝をつき、俺の前にかがみ込む。
まるで危険物処理にエントリーしている爆発物処理班のような丁寧で熟達した様子で、素早く俺からゴムを取り外した。
そして、顔を俺の股間に埋めると、アナルに届きそうなほど奥からペニスの先端までゆっくりと舐めて、そのまま、それを口に含んだ。
ジャックの口の中の熱をじかに感じ、思わず呻き声を洩らす。
焦らすつもりなのか、ジャックは銜えていたペニスを口から抜いた。
唇でついばんだり、側面に軽く舌を這わせたりしながら、上目づかいで俺を覗う。
「ストーン・コールド」の二つ名に相応しく、俺は冷徹にジャックの視線を受け止めてやった。
やがて、ジャックは堪えきれなくなったように、ふたたび俺を奥深くまで銜え込むと、激しく舌を絡め始めた。
その表情は、まるでキャンディーバーを無心に舐める子供のようにも見える。
最初は痛い程だった刺激が、次第に快楽へと変わっていく。
奥歯を噛み締めて声を殺し、ジャックに目をやった。
さっき果てたばかりのジャックのペニスは、もう硬く勃ち上がっていた。
俺は思わず、含み笑いを洩らす。
怪訝そうに、ジャックが俺を見上げた。
その金の髪の根元を軽く掴んで揺すぶり、俺は、「出したばかりだろう?」と、ジャックを揶揄う。
そして、もう片方の手で、ジャックのペニスを握った。
「またイクか?」
俺の方も、ベッドでしか他人に聞かせない声で、ジャックに囁きかける。
返事の代わりに頷くと、ジャックは、両手で俺のペニスの根元を支え、また、激しくそれを吸い始めた。
俺もジャックのものをゆっくりと、時には小刻みに撫で回し、擦り、玩ぶ。
「出すぞ」
俺は息を殺して声を絞り出した。
ジャックが、更に深くまで俺を含む。
その口中で、俺は激しく果てた。
ほどなく、ジャックを玩んでいた掌の中に、またあの熱い液体が溢れ出した。
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