mi・chi

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 ふと顔を上げたら、知らない道の真ん中にいた。  田舎町のメインストリートと言えばいいのか、『古き良き時代』という言葉がよく似合う、昭和レトロを詰め込んだジオラマに入り込んだようだった。  ここはいったい、どこだろう……。  どうしてこんな場所にいるのだろう……。  何があったのか、今にいたるまでの自分の行動を思い返した。  学校を出て、音楽を聴きながらいつもの道を歩いて、途中のコンビニでおにぎりとお茶を買って、駅に向かって――。  電車に乗って、いつもと何も変わらない景色を見ながら小腹を満たしたんだ。最寄り駅に到着したから電車を降りて、それから――。  ……そうだ。駅を出た直後に目眩(めまい)がして立ち止まったんだ。  疲れているのかなと思って、ほんの数秒、こめかみを押さえ頭を軽く振って目を開けたら、全く知らない道と景色が目の前に広がっていたんだ。  思い振り向いて駅を確かめた。でもそこにあったのは古ぼけた木造の駅。私がさっきまでいたのは、コンクリートでできたどこにでもあるはずの駅だったのに、いったいどういうことだろう。  よく見ると、母の故郷の駅に雰囲気が似ている。  ……どういうこと?  入口から中を覗くと、向こうはさっきまで私がいた駅の中だった。多くの人たちが行き交っているように見えるのだけれど、どういうわけかピクリとも動かない。しかも、ガラスのようなものに遮られて向こう側に行くこともできない。  いったい、何が起こっているのだろう。  何とか駅の中に入れないかと、建物伝いに道を歩いてみた。きっとどこかに、職員の通用口のようなものがあるに違いない。  しかし見つかったのは違和感のある『壁』だった。城壁のようにそびえ立ち、猫一匹通さないと言っているかのような威圧感だ。駅舎の壁の延長のように壁がそびえている。どこまで続いているのかちょっと見ただけではよく分からない。  私は、壁に沿って歩くことにした。切れ間くらいはあるだろう。上手くいけば、どういう目的で建てられた壁なのかも分かるかもしれない。でも、見た目通り、壁はどこまでも続いていた。もしかして、この街を囲んでいるのでは……。  ……気持ち悪い。  城壁だとしても門くらいはあるはずだけれど、見た感じ、そんなものはなさそうだ。  それだけじゃない。こんな街が日本に以前からあったな、かなりの話題になってもおかしくないのに、都市伝説でも聞いたことがない。  それじゃあ、ここは、いったい……?  私は最初に立っていた場所に戻り、深呼吸をして気持ちを落ち着けると、自分がいる場所について少しでも情報が得られるように、できるだけ冷静にこの街を見渡した。
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