プロローグ

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 舞台には、白いブレザーの少年たちが十人、横一列に並んでいます。清潔な髪型で色が白く、人々に幸せと喜びの雪を降らせる天使のように、やさしくあたたかい笑顔を浮かべています。まさしくみちのくの美少年たちです。  そしてホールには、みちのくの自然や四季の美しさ、歴史と文化への誇りを奏でるソプラノの歌声が響き渡るのです。   この公演のクライマックスが、「アメユジュトテチテケンジャ」。この歌は、皆さんも街で聴いたことはありませんか? 「♩アメユジュトテチテケンジャ」  ヘブライ語の祈りの言葉。 「♬アメユジュトテチテケンジャ♪」  澄んだ声が優しく慎ましく、ホールの人々に届けられます。 「♩アメユジュトテチテケンジャ♩アメユジュトテチテケンジャ」  客席からはすすり泣きの声があちこちから聞こえてきました。ハンカチで顔を覆っている婦人もいます。隣の人と手を取り合う光景があちこちで見られます。ついには床に突っ伏して顔を埋めて泣きじゃくる人も現れます。  祈りの言葉を百回繰り返す「アメユジュトテチケンジャ」。  この歌が終わったとき、観客たちは次々と立ち上がり、深々と舞台に向かって頭を下げます。  そして主催者が制止するまで立ったまま拍手を続けるのです。  「この歌を聴いていると、生まれたときには持っていた純粋な心と澄んだ瞳を呼び戻す。そんな気がするのです」  人々の賞賛の下、「アメユジュトテチテケンジャ」のCDの売り上げは百万枚を突破しました。  青森での公演を基本としていますが、現在では日本全国から飛行機や東北新幹線に乗って、公演を聴きにくる人々も少なくないのです。e1475e82-3c5a-4145-b1e2-6c157a5903fd    
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