make up…

11/14
前へ
/14ページ
次へ
 結局、俺がチキンだから、ここぞというところで怖気づいてしまって、藤木が女泣かせの遊び人だという確証を得ることが出来なかった。けれど俺は、嶺が撮った写真を証拠にして「藤木は軽い男だ」と楓に伝えようと思った。そうじゃないと、俺のあの努力が報われない。  明日のバイト、藤木は休みだと独自のルートから情報は仕入れてある。  鉄は熱いうちに打つべし!    俺は早速、楓にメッセージを送った。  『明日、バイトの後メシ食いに行こ』  『大地のおごり?』  『ばーか!迎えに行く。七時?』  『うん』  『了解』  一通りのやり取りの後、『楽しみ』の文字つきの白くまのスタンプが届いた。そのスタンプを見て、少しばかり胸が痛んだ。  翌日、約束通り楓のバイト先へ向かった。そして、店の前で楓が出てくるのを待っていると、藤木が店に向かってやってくるのが見えた。    え!?    俺の独自のルートの信憑性について考える。  いや、今はその時じゃない。  どうする?隠れる?  いや、必要ないか…   ど、どうしよう?  そうこうしているうちに、近くまで来た藤木と視線がかち合った。  藤木は一度、俺から視線を外したかと思うと、急にまた視線を戻して目を見開いた。  「君は…楓ちゃんの友達だね…」  「へ?」  俺は動揺を隠せず、間抜けな声が出る。  「君さー…妹か姉ちゃんいる?」    藤木は俺に近づいて、顔をマジマジと見た。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加