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結局、俺がチキンだから、ここぞというところで怖気づいてしまって、藤木が女泣かせの遊び人だという確証を得ることが出来なかった。けれど俺は、嶺が撮った写真を証拠にして「藤木は軽い男だ」と楓に伝えようと思った。そうじゃないと、俺のあの努力が報われない。
明日のバイト、藤木は休みだと独自のルートから情報は仕入れてある。
鉄は熱いうちに打つべし!
俺は早速、楓にメッセージを送った。
『明日、バイトの後メシ食いに行こ』
『大地のおごり?』
『ばーか!迎えに行く。七時?』
『うん』
『了解』
一通りのやり取りの後、『楽しみ』の文字つきの白くまのスタンプが届いた。そのスタンプを見て、少しばかり胸が痛んだ。
翌日、約束通り楓のバイト先へ向かった。そして、店の前で楓が出てくるのを待っていると、藤木が店に向かってやってくるのが見えた。
え!?
俺の独自のルートの信憑性について考える。
いや、今はその時じゃない。
どうする?隠れる?
いや、必要ないか…
ど、どうしよう?
そうこうしているうちに、近くまで来た藤木と視線がかち合った。
藤木は一度、俺から視線を外したかと思うと、急にまた視線を戻して目を見開いた。
「君は…楓ちゃんの友達だね…」
「へ?」
俺は動揺を隠せず、間抜けな声が出る。
「君さー…妹か姉ちゃんいる?」
藤木は俺に近づいて、顔をマジマジと見た。
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