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近えよ!
"いっちゃん"だとバレやしないか、肝を冷やす。
俺は顔を背けて「いません…」と答えた。
「……昨日さー…君にすごく似てる女の子とね、遊んだんだけど、急に帰っちゃってね…」
藤木は俺の顔を見つめながら、話し始めた。
「そうなんすか…」
なんと返答して良いかわからず、取り敢えずそう返した。
「うん、その子の顔がめっちゃタイプで、また会いたいなーって思ってて…」
え、これ…バレてる?
何で俺に話し始めた?
ヤバい?
騙されたこと気づいてる?
俺、シメられる?
嶺は今日いないし…
手と額に汗が滲む。
「君…いっちゃんでしょ?」
藤木は真っ直ぐな視線で、俺を見つめた。
怒るでも、笑うでもなく、藤木の表情からは感情が読み取れない。
「違います」と、俺は間髪入れずに答えた。
しまった!早すぎて逆に怪しい…
そんな俺の焦りを無視して、藤木はゆっくりと静かに話し始めた。
「どんな事情があるのか知らないけど…」
ヤバい、これは逃げた方がいいかも…
楓、ゴメン…
逃げようと思って俺が一歩後退りすると、藤木は素早く俺の腕を掴んだ。
ヤベェ!
「いっちゃん…オレさ」
俺は逃れようと腕を振り解こうとするが、びくともしない。体格差もあるし、敵うわけがない。
怖えよ…やばい、どうしよう…
藤木は俺の両腕を掴んで、見下ろす。
「いっちゃん、オレと付き合ってよ…」
!??
俺は思ってもいない突然の告白に、頭が真っ白になった。
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