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「あひゃひゃひゃっ!大地に彼氏ができそうとか、まじウケる!」と、嶺は腹を抱えて笑った。
あの後、俺は放心状態で楓とラーメンを食べて、その足で嶺の家に転がり込んだ。
「笑い事じゃねーよ…楓は楽しそうに"付き合ってみれば?"なんて言いやがるし…」
俺はため息をつく。
「楓に藤木をあきらめさせるって作戦は、ある意味成功なのになぁ〜…まさか同時に失恋するとは…ご愁傷様としか言いようないな」
嶺は含み笑いを浮かべて、両手を合わせた。
「それより、俺、マジで藤木に食われそうで怖いんだけど…」
俺がそう言うと、嶺が「心配すんな。俺がちゃんと守ってやるよ」と、サラリと言った。
それを聞いて、嶺が俺を連れて逃げてくれた時の頼もしい姿が頭をよぎった。
キュン…
ん?
んんん?
俺は、シャツの胸元を握った。
何、今の…気のせいだよな?
「大地?」
「え?あ…お、おう、頼むな!」
「任せろって!大地の貞操は俺が守るぜ」
嶺は、いつものように悪戯に笑った。
「今度はお前が身を挺してくれんの?」
「バーカ!」
俺らは小突き合って、ケラケラと笑った。
恋愛はしばらくいらねぇな…
こんな風に親友とバカ話して、お気楽な青春を謳歌する日々も悪くない。
―――と、この時はそう思ったはずだった。
だが、これから数ヶ月後…
まさかこの唯一無二の親友が、恋人に化ける日が来るだなんて、この時の俺に知る由はなかった。
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