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俺とそう身長が変わらない嶺姉から服を借りた。
首元を包み込むハイネックのゆったりしたアイボリーの秋物ニットに、下は敢えてスカートではなく、黒のスキニーパンツを合わせてシンプルに。黒髪のボブヘアーのウィッグを借りて、メイクを施された。
「やだぁ~大地くん可愛い~!そこらにいる女の子より可愛いの罪だわ…」
嶺姉は、すでに赤い口紅が塗られた俺の唇にグロスを塗って、フルメイクが完成した俺を一歩離れて見ると、歓喜の声をあげた。
「化けたな…男には見えないわ…」
嶺姉の部屋のベッドの上で少女漫画を読み漁っていた嶺が、頬を染めたアホ面で俺を見つめた。
俺はその視線に耐えかねて「あんま見んなや」と言うと、嶺は「あ、大地なんだった」と、笑った。
「ちょっと女の子のふりで声出してみて?」
嶺姉にそう言われて、俺は渋々「こう?…んん…あーあー…どう?」と、色々と試しながら声を変えてみる。
「あ、今の、それ、それでいこう!あまり高く出そうと意識しない方がいいかも…」
目を輝かせ、楽しそうに浮かれている嶺姉。
感謝ではあるが、俺は不安しかない。
こんなんで本当に藤木が引っかかるのか?
目的があるとはいえ、いつも男らしくなりたいと思っていたというのに、その反対を突き進んでいる自分がなんだかとっても惨めに思えた。
俺は、鏡に映る少女を睨みつけた。
無論、鏡の中の少女も俺を睨み返してきた。
可愛いなチクショー…
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